


ところで、ヒメヒカゲの生息地を訪れると、たまに、目に付く個体全てを採集するといった輩に遭遇することがあるが、このような採集はやめていただきたい。私も蝶屋であり、採集自体を否定するものではないが、限られた生息地の個体をオニ採りする行為は非難に値する。
さらに「オークションで売るために・・・」そんな蝶に対する愛情の感じられない採集行為も真の蝶愛好家のすることではない。
ヒメヒカゲの生息地を訪れるたびに思い出す故・白水先生の「『"蝶研フィールド"の創刊にあたって』白水隆(1986)蝶研出版」の一節を以下に抜粋して引用させていただこう。
「日本のチョウだけの専門月刊誌"蝶研フィールド"がいよいよ創刊されるという。なにはともあれ,チョウの愛好家として先ずは結構なこととお祝いを申し上げたい。(中略)近年の初心者はただ数多く採集することだけが目標であるような傾向がある。例えば、猫のひたいのような狭い湿地に発生する小さな集団のヒメヒカゲを1日に数百頭も採集したというような記事を見ると,こんなことをしていてよいのかと考えこまざるをえない。これほどまでではないとしても,ギフチョウやヒメギフチョウについても似たような問題がある。採集するのが悪いとは言わないが,ものには常識ということがある。私は採集禁止には原則として反対であるが,少数の無茶をする人がいると他から非難を受けても弁解に苦しむ。大部分の真面目な研究者もそのために迷惑を受けることになる。"蝶研フィールド"は乱獲をあおるようなものであってはならない。チョウの研究では分布(新産地の発見,既知産地についても現況の調査など),生態観察にまだ山のような未知の分野が残っている。本誌の記事はそういう方向に初心者を導くようなものであってほしいと思う。 白水隆」

蝶愛好家として、こんなシーンがいつまでも見られることを願ってやまないわけです。
この日の走行距離273km。【おしまい】